厚生労働省から指針発表ーパワハラ防止に必要なこと(1)
はじめに
厚生労働省の労働政策審議会から、パワハラ・セクハラの定義などを含めたパワハラ・セクハラ防止法指針案が公表されています。
リンクはパワーハラスメント(パワハラ)に関する指針案で、今回はこれをテーマに書きたいと思います。
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(案)について【概要】(PDFファイル)
2020年にいわゆる「パワハラ防止法」(改正“労働施策総合推進法”)が施行されることを前に、どこまでがパワハラ(セクハラ)でなく、どこからパワハラに該当するのか、具体的な禁止事項等の基準を行政として定めた素案です。
※仕事だから目を通しますが。「くだらないな」が正直な気持ちです。
パワハラ防止に必要なこと①
くだらないと思うのは、こんな指針案あるいは「パワハラ・セクハラ防止法」が存在することです。“道徳観”や“倫理観”をなぜいい年をした大人が学ばなければならないのでしょう。
このような法律をつくったり指針をつくったり、そのために議論を重ねたり、まさに仕事のための仕事だな~と思ってしまいます。そんなこと言ってしまっては、社労士という立場上ダメなんですが。
でも、一人のいい大人としては「くだらない、そんなことをするのであれば、他にすることがあるでしょう」と言いたくなってしまう。どうしてそのようなくだらない仕事が生じざるを得ないのか。時代といってしまえば時代なんですかね?何だか世知辛い…。
“パワハラに該当する事例”つまりそれってぶっちゃけ、“いじめに該当する事例”ということになりますか。
小学校のとき「さわやか3組」を観てたこと、大人になってみな忘れちゃったのでしょうか?「さん、さん、さん、太陽の~ひかり~、ぼくらの肩に~ふりそ~そぐ~」です。「さわやか3組」は観ていなくとも「中学生日記」は?あるいは「いじめかっこ悪いよ」と前園さんがACでコマーシャルやっていたじゃないですか?
調べてみたら、さわやか3組の放送期間は1987年~2009年だそうです。そうすると1975年~1999年生まれ、現在20歳~44歳あたりが小学生の時代に放映されていたということになります。う~ん、45歳以上は知らないか…
じゃあやっぱり、このような指針をつくるより、老いも若きもみんなで「さわやか3組」見ましょうよ!
見た後に話し合いとかはいらないから、子どもたちが集団生活の中で思い悩むさま、子どもたちがなんとか解決していこうとするさまを見ていれば、子どもだって傷つきながら戦っているのに自分は何をやっているのか、と身につまされる思いになること請け合いです!
…というのは、半分冗談ですが、半分以上本気です。子どものときに教わる「自分がいやだと思うことを他の人に対してしない」という心掛けが全ての人にあれば、ハラスメントは起こりようがないと思うからです。
とにかく、こんな法律が出てくることが悲しくて、解決策にもならない、何の役にも立たないことをぐだぐだと書いてしまいました。ごめんなさい。
指針(案)の概要
どうにもならないことを書きすぎましたが、そろそろ本題に移ります。
以下、指針(案)内容を簡単にまとめます。
適用期日
適用期日:令和2年6月1日(予定)
パワハラとは
職場において行われる言動で、下記①~③の要素を全て満たすもの。
①優越的な関係を背景としている
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境が害されること
※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワハラに該当しない。
パワハラの類型
イ)身体的な攻撃(暴行・傷害)
ロ)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
ハ)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
ニ)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
ホ)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
ヘ)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
法制化による責務の明確化
事業主の責務
●職場のパワハラを行ってはならないこと、雇用する労働者に対しパワハラ問題に関心と理解を深めさせること。
●パワハラ防止のために、雇用管理上次の措置を講じること(義務)
・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・パワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
労働者の責務
●パワハラ問題に対する関心と理解を深めること、他の労働者に対する言動に必要な注意を払い、事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力するよう努めなければならない。
指針(案)の問題点
さて、この指針案の中で問題となるのが「該当しない事例」を提示しているところで、これについては日本労働弁護団が声明を出しています。
以下は指針(案)に記載されている「該当しない事例」の見本です。パワハラの類型ハ)人間関係からの切り離しに該当しないと考えられる例として、次のように挙げています。
①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。
「追い出し部屋」、少し前の言葉で言えば「窓際族」の問題について示唆しています。条件によっては「追い出し部屋」も「可」、そんな内容です。
①については「短期間」とはどのくらいか、②については「一時的」とは、「必要な研修」とは何か、具体的に示されているわけではありません。客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワハラに該当しないという原則に基づき、それぞれが判断することになります。
日本労働弁護団の主張するように、ここは該当する事例の例示のみでよかったと私も思います。「業務上必要で、3ヶ月は一時的だと思い、別室の研修にした」とか何とか、変に言い逃れができそうですものね。
語りえぬものについては、沈黙しなければならない。です。
おわりに
ほぼほぼ私個人の道徳的な意見で終わってしまいましたね。さわやか3組をネタにしたかっただけ?みたいな。
くだらないなと思ってしまうのは、ハラスメント対応がどちらかと言えば後ろ向きな仕事だと感じるからです。いやな人がいやなことをする、その尻ぬぐいをなぜ他人がしないといけないんだ?自分の尻は自分で拭け、と言いたくなります。
しかし当事者(被害者)にしてみると、それでは救いがないわけですよね。突き放してしまっては、ますます問題が隠されてしまい、とんでもないところまで追いつめられて大問題となってしまうことになりかねません。
ですからハラスメント対応は「職場環境の整備」「労働問題の予防」といった前向きな観点で取り組まないといけません。お、社労士っぽくなったぞ。
次回はもう少しまじめに、業務で使えるよう、【実務はどうするか?】という点を掘り下げたいと思います。