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【2019年4月法改正:①】フレックスタイム制-1

はじめに

今回からはしばらく、2019年4月以降の法改正(働き方改革関連法案など)についてまとめていこうと思います。

公布から1年以上、法施行からはすでに半年弱経って、”満を持して”の記事。『今さら感』が強いですね!うふふ。

私(やはだ)の知識整理のために記事にしているようなものですが、どこよりも分かりやすくを目指して書いてみますので、ご興味のある方は読んでみてくださいね。

第一弾はあえての【フレックスタイム制】です。有給休暇の付与義務は?

こちらをどうぞ【2019年4月法改正:②】年次有給休暇の付与義務-1

こちらをどうぞ【2019年4月法改正:②】年次有給休暇の付与義務-2

それでは本題です↓

何が変わったの?

もともとフレックスタイム制は、2019年の改正以前より労働基準法第32条の3に定められていました。

始業・終業時刻の決定を社員に一任し、社員の都合に応じた働き方を許容するものとして、すでに導入済みの企業は全企業の5.6%、社員数1000人以上の大企業に至っては導入率は24.4%と、大企業を中心に導入が進んでいる制度です。(『平成30年厚生労働省 就労条件総合調査』より)

今回の改正でフレックスタイム制に関し変わったことは、ただ一点だけ。

変わったこと→フレックスの清算期間が最大1ヶ月間から、最大3ヶ月間まで拡大しました。

…以上!

運用上の細かい点の改正事項などありますが、大筋では以上です。

そもそもフレックスタイム制って何?

改正事項の前に、そもそもの話を。

「フレックス」って、言葉の響きから、自由な感じがしませんか?

個人的には「♪週休2日、しかもフレ~ックス」と『ロマンスの神様』(by広瀬香美)を口ずさまずにはいられません。『ロマンスの神様』が流行していた当時(たしか小学校高学年~中学時代)の私、フレックスの意味は分からなくても、これまた当時流行っていた「3高」の言葉と結びつけ、何やらイケてる会社員はフレックスで悠々働くらしいぞ、と直感的に感じ取っていたものです。OK、バブリー♪(by平野ノラ)

ちなみに、日本におけるフレックスタイム制法制化:1988年、『ロマンスの神様』発表:1993年だそうです。

 

フレックスタイム制を端的にいえば

端的にいえば、始業時刻と終業時刻の決定を社員に任せ、その日に何時間働くかも社員任せ、期間中で帳尻合わせをして頂戴ヨロシクという制度です。

仕事の始まりと終わりを社員が勝手に決めていいよ

会社では何時何分っていう指定はしませんよ

さぼり過ぎたり、逆に働きすぎたりは良くないので、会社として『期間中の総労働時間数』は決めておきますよ

誤解が多いですが、フレックスタイム制の制度設計でよくセットにされる「フレキシブルタイム」や「コアタイム」は、オプションにすぎません。(=定めなければいけないもの、ではない)

※オプションとは言っても、会社を24時間開けて社員が働ける環境にすることは、あらゆる管理の面からよろしくないため、一定の限度を設けるのが一般的です。

フレックスタイム制をもう少し細かく言いますね

第三十二条の三 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
一 この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
三 清算期間における総労働時間
四 その他厚生労働省令で定める事項

…おっと、勢い余って細かく言いすぎました(というか労働基準法の条文そのものを引用しただけ)。

ここにはフレックスタイム制を導入する要件が書いてあります。

  • 就業規則で「始業および終業の時刻を社員が決定してよいこと」を定める。
  • 労使協定で「対象となる社員」「清算期間」「清算期間中の総労働時間」「その他省令事項※」を定める。

 ※その他省令事項=「標準となる1日の労働時間」「コアタイム(任意)」「フレキシブルタイム(任意)」

それぞれの言葉の意味をかみ砕いていうと次の通り。

・清算期間 ≒ 給与計算期間です(ほぼ)。

・コアタイム=例.10時~15時必ず仕事してね。の時間

・フレキシブルタイム=例.始業(終業)は7時~10時(16時~19時)の間にしてね。の時間

・標準となる1日の労働時間=文字通り、1日当たりの目安労働時間。年次有給休暇の計算に使います。

繰り返しになりますが、始業時刻と終業時刻を社員任せにするということは、その日に何時間働くかも社員任せにするということになります。(フルフレックス=コアタイムを定めないフレックスの場合)

 

社員にしてみれば、「木曜は帰りにジムに寄るから早く帰れるよう、水曜日は始発で出社してサクサク仕事するか!」というリア充社員も、はたまた「やべぇ寝坊した…。まぁ今日はいいか、夜予定がないし終電近くまで仕事すれば…」という非リア充社員も、どちらのニーズにも応えることができる制度。

会社にしてみれば、それぞれバラバラな社員の出社・退社・休憩時間の勤怠記録から労働時間を計算しなければならない、厄介な制度。

「社員の自律性に任せ、仕事の評価は成果ではかることができる」という会社であれば馴染みやすく、「勤怠成績は重要。定時に遅刻なんてもってのほか。とりあえず在席していないと評価できない」という会社にしてみれば導入のハードルは高く、企業文化を根本的に変えることまでが所要となり、嫌煙してしまうような制度です。中小企業で導入が進まないのは、仕事の評価を成果ではかることができる仕組み作りまで出来ている会社が少ないからかもしれません。

 

フレックスタイム制での給与計算(残業代計算)

当制度でまずおいて一番の特徴は「一日ごとの法定時間外労働」という概念がないことです。

例えば10時間働いた日があったとしても、それだけでは「残業」とイコールになりません。

では「フレックスに残業代はないの?」というと、その答えはもちろん「NO!」

 

フレックスタイム制の残業代計算は、清算期間ごとにおこなうことが原則です。

たとえば清算期間を1ヶ月と決めたら、

a)清算期間1ヶ月の総労働時間を決める。:図の黄緑色

b)清算期間が済んだら、日々、実際に労働した時間を合計する。:図の水色

aとbを比較して

①a<bであれば飛び出た部分の残業代を払う。

②a>bであれば足りない部分を 控除する or 条件付きで次の清算期間に繰り越し or 時間単位有給処理。

図にするとこのような感じになります。↓

※厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』p5より

何が変わったの?part2

以上を踏まえて、2019年4月施行のフレックスタイム制に関する法改正事項をおさらいしてみましょう。

変わったこと→フレックスの清算期間が最大1ヶ月間から、最大3ヶ月間まで拡大しました。

です。

これまでは、フレックス社員は1ヶ月間という限られた期間の中で労働時間の帳尻合わせをしていました。

「月末月初に処理が偏るからその時には頑張るけど、月の半ばは早めに帰っちゃおうっと」

 

この期間が3ヶ月間になるとどうなるでしょう。たとえば清算期間を6~8月にした場合。

「8月に社労士試験だ!7~8月に追い込みする時間を確保するために、6月多めに働こう!」

…という感じで、社員は、よりプライベートを柔軟に計画することが可能になります。

 

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運用上の細かい改正事項

前述した労働基準法第32条の3(フレックスタイム制)には、続きがあります。そこに、清算期間の上限を3ヶ月間にしたことに伴う運用上の改正事項である以下3点が制定されています。

運用上の細かい改正1:清算期間が1ヶ月超でも、「超がんばる月」「超休む月」みたいにしないで

先ほどのフレックス社員(社労士受験生)くんの例でいえば、

「6月にとことん頑張りぬく!よし、6月は1日16時間勤務だ!そうすれば試験の1カ月前は全休できる!」

という「やり過ぎ」に待ったをかけることになります。(いや、そもそも“法改正情報”に詳しくならないといけない社労士受験生くんであれば、そんなことしないはずですけどね。いろんな意味でアウトです。笑)

具体的には

  • 清算期間における総労働時間に法律での上限あり(※これは清算期間が1ヶ月の場合もあります)

に加えて

  • 1ヶ月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えないこと

という縛りができました。

※総労働時間の法定上限時間等、細かい計算方法についてはfootnoteを参照ください

運用上の細かい改正2:清算期間が1ヶ月超の場合、締結後の労使協定の届け出必要あり

これまでのフレックスタイム制でも労使協定の締結は必要でしたが、届け出は不要でした。清算期間が1ヶ月を超える場合、加えて労使協定を労働基準監督署に届け出る必要が生じます。

原則1週40時間の法定労働時間を超えて労働させるときには36協定の届け出が必要となります。これは、法定時間を破るという法違反をするつもりです、前もって言っておきますので罰則には目をつぶってくださいね、という意味合いで届け出させるものです。(免罰効果といいます)

同様に、1ヶ月を超える清算期間のフレックスタイム制では、繁忙月には法定労働時間を大幅に超える可能性があるため、合法的法違反(変な言い方ですが)を監督行政に事前に知らせるという意味合いかと思います。←あくまでも私見ですので、間違えていたらごめんなさい。

運用上の細かい改正3:完全週休二日制の事業場におけるフレックスタイム制について

これまでの労働基準法では、カレンダーの曜日の巡りによっては、1日8時間相当の労働を日々続けていたにもかかわらず法定労働時間を超えてしまう、というおかしな事態が生じていました。

実務的には”行政通達”によりそのおかしな事態を解消していたところ、通達ではなく法律として成立させ、おかしな事態をきちんと正常な事態に解釈できるようにしましょう、ということで改正されました。

※興味のある方は、厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』p8に書いてあります。

 

少し長くなったので、続きます。→【2019年4月法改正:①】フレックスタイム制-2

 

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footnote/more information

厚生労働省『フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き』

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