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発達障がいのある社員をメンバーにするチームマネジメントとは

はじめに

 

近年、発達障がいという概念が知られるようになるとともに、“発達障がい”の診断を受けた、もしくは“発達障がいグレーゾーン”に該当する旨を社員が申告するケースが増加しています。

「障がい」と名のつく以上、他の(健常である)社員と労務管理は切り離して考えるべきなのだろうか?また、逆に切り離して労務管理を行うことにより、障がい者差別を助長することになってしまわないのか?迷われる社長様や総務ご担当者様は多いと思います。

ここでは、社員が“発達障がい(もしくはグレーゾーン)”と診断された際の労務管理について書いていきます。

発達障がい当事者の「採用」で注意する点

障がいの有り無し関係なく、誰しも、周囲に自分の弱みを見せたくないと思うものです。

発達障がいを抱えている当事者も「障がいを公表することにより、会社の中で不利な立場に置かれるのではないか」と危惧し、採用試験の際に会社に隠して入社する方が多くいるようです。

そして入社後、さまざまな職業生活の場面で、主に対人面に関する問題が噴出し、雇用契約の終了(普通退職か、退職の勧奨か、解雇か!)に関する重大な労務問題に発展してしまいがちです。

採用試験の際、学歴・職歴・経験のほか健康状態についても確認すると、こういった労務問題の予防となります。

採用試験や面接の際に健康状態について確認することは認められており、健康状態は身体的疾患ばかりではなく精神疾患も含まれます。長期間働き続けられるかどうかという観点でスクリーニングすることは重要で、心身の健康は良好な働きぶりの基本です。

とは言え、闇雲に健康状態を確認するのは厚生労働省が公表している「採用の指針(=応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しない)」からも逸脱します。*footnote参照

また、個人情報保護法では、個人の病歴は『要配慮個人情報』とされ、本人の同意を得ることなく取得することが禁じられる、非常に慎重な取り扱いが求められる情報です。

大変デリケートな問題を含むので、聞き方には細心の注意が必要です。

どんな応募者に対しても基本的には、人権、本人の意思や気持ちを尊重し、「あなたが長く安心して勤めてもらいたいから質問する」ということを応募者に理解してもらいながら採用を進めていく気持ちが必要でしょう。

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障がい者の雇用に関するルール

ちなみに今日(2019年7月16日)は、令和元年6月1日現在の『高年齢者・障害者雇用状況報告書』をハローワークに提出する期限です!忘れていませんか?

--『高年齢者・障害者雇用状況報告書』?何それ?うちにそんなの来てたっけ?という社長さんや総務のご担当者様、御社がハローワークに雇用保険の加入を届けている加入者(雇用保険被保険者)の人数が31人に満たない場合は、そのような書類が会社に届くことはありません。小規模な会社様は『高年齢者・障害者雇用状況報告書』の存在すら知らないはずです。

 
やはだ社労士
「ん?そういえば、社員を雇ったけどハローワークに届け出をしてないなぁ…やばいかなぁ、どれくらいやばいのかなぁ…」そんな罪悪感を抱えている社長さん、もしいらっしゃったら、相談に乗りますよ。お気軽にどうぞ!

さて、そんな『高年齢者・障害者雇用状況報告書』など、障がい者を雇用するうえで会社に決められているルールがありますので、発達障がいに限らず、そのルールを見ていきましょう。

【障がい者の雇用に関するルール】

1・障がい者雇用率

2018年、行政機関で「障がい者雇用率水増し問題」が発覚して騒ぎとなった、例のアレです。国や地方公共団体を含め、すべての事業主を対象として、法定雇用率以上の障がい者を雇用する義務があります。

現在、民間企業では2.2%の法定雇用率が定められています。

法定雇用率を達成しているかどうかを行政機関が監督するため、『障害者雇用状況報告書』の提出が求められるわけです。

※本人・家族の考えなどにより障がい者手帳を所持していない発達障がい当事者も多く、実務のうえでは、障がい者手帳を所持していない者はこの法定雇用率に含めないことになります。

2・障がい者雇用納付金制度

法定雇用率を達成していない会社は、不足している障がい者一人につき毎月5万円(年間60万円)が徴収されます。中小企業にとっては大きい金額ですよね。

また、徴収された障がい者雇用納付金を源資に、法定雇用率を超えて障がい者雇用を実現している会社に対しては「障害者雇用調整金」が支払われています。

3・障がい者の差別禁止及び合理的配慮の提供義務

「障害者雇用促進法」において、雇用管理のうえで障がい者の差別を禁止することが法令で定められています。

また、会社は障がい者の特性に配慮し、職場環境を整備するよう義務付けられています。これを「合理的配慮」義務といいます。

ん?「合理的配慮」って何?…そうなりますよね。具体的な事例については『合理的配慮に関する指針』が厚労省から発表されています。(のちほど、解説しますね)

4・その他のルール

  • 障がい者を5人以上雇用する職場においては”障がい者職業生活相談員”を選任する
  • 障がい者の虐待防止を目的とした、他従業員に対する円滑な障がい者雇用をはかるための教育研修を行う

など、障害者雇用雇用促進法、障害者虐待防止法にもとづくルールがあります。

 

また、障がい者を試行的に雇用する、障がい者の働きやすい環境にするために設備を整備するなど、要件に該当すると助成金申請をすることにより助成金を受給することもできるようになりますので、忘れずに確認したいものです。

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発達障がいを理解する

ひとくちに発達障がいと言っても、その症例はさまざまです。発達障がいの中でもどういった診断を受けて特性はどのように表れるのか、理解することがチームマネジメントの第一歩です

症例を区分して『合理的配慮』を行うことは、レッテルを貼り差別をすることとは異なります。発達障がい当事者の特性や個性を理解していくという視点は、社員それぞれに得意不得意分野があり、各々のタレントマネジメント(能力開発)を行うことの延長線上にあります。

以下では簡単に発達障がいの特性などについてまとめますが、私は精神科医ではないので症例の詳細解説は行いません。

また留意点として、障がい特性の表れ方は人それぞれ千差万別で、その表出のしかたに強弱があり、カテゴライズすることにより、かえって色眼鏡でその人を見ることにつながりかねないことがあることを、前もって提言しておきます。「その人を理解する」一環に、症例や特性の把握がある、とお考え下さいね。

広汎性発達障害

自閉症スペクトラム障害(ASD)、アスペルガー障害、高機能自閉症など分類されていた障害を、「広汎性発達障害」と一つの診断名にしたもの

■主な特性

  • 対人関係、コミュニケーションの困難さ、他人との社会関係の築きにくさ
  • 特定の物事への興味、関心、こだわりの集中
  • 言葉の表出の困難さ
  • 特定のことを繰り返す行動
  • 得意・不得意なことの大きな差、凸凹

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

■主な特性

  • 不注意、多動性、衝動性
  • 気が散りやすく物事に集中しにくい
  • 忘れ物が多い
  • 変化に敏感、高い行動力

LD(学習障害)

■主な特性

主に3種類のタイプ

  • 読字障害(ディスレクシア):読みの困難
  • 書字表出障害(ディスグラフィア):書きの困難
  • 算数障害(ディスカリキュリア):算数、推論の困難

→知的な発達遅延や感覚器官の障害がないにも関わらず、「読む」「書く」「話す」「計算する」などの特定の能力を要する学習への困難さ

『合理的配慮』とは?

さて、マネジメントに必要な「合理的配慮」とはなんでしょう。会社としてはどのようなことが障がい者に対する「合理的配慮」となるのでしょうか。

「合理的」というのはとても抽象的な言葉です。(私の生業である社労士にとってはお馴染みの概念(労働契約法第16条)ですが、実際は雲を掴むような感じを抱かせる言葉です。*footnote参照)

ここでは厚生労働省から公表されている『合理的配慮指針事例集(第三版)』より、具体的な事例を挙げた方がわかりやすいと思いますので、以下引用します。

募集・採用時の配慮事例

(募集・採用)面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。

●同席者の例

:ハローワークの職員、障害者職業センターの職員、障害者就業・生活支援センターの職員、発達障害者支援センターの職員、…(略)…、特別支援学校の教諭、ジョブコーチ

●同席者の役割の例

:本人の障害特性・配慮事項を説明する。同席することで、本人の不安感を取り除く。雇用条件等の説明を一緒に聞き、本人の理解を促す。面接における本人の受け答えを補助する。

 

(募集・採用)その他の配慮

通常は行っていない入社前説明会を実施し、本人・保護者・支援機関の職員等に出席してもらい、見学・説明・質疑応答・配慮事項の説明等を行った。

採用後の配慮事例-1

(採用後)業務指導や相談に関し、担当者を定めること。

●担当のあり方の例:

作業ごとに担当者を決めて、本人が混乱しないよう、一つの作業ごとにその担当からのみ指示を出すようにしている。…(略)…入社当初は全ての連絡・指示の窓口を一本化し、仕事や環境に慣れてからは徐々に指示等をする職員を増やしていった。

 

(採用後)業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。

・口頭で、例えば「午前中はこの仕事を行ってください」、「終わらなくても、午後はこの仕事をしてください」と時間を区切って指示したり、「Aが終了したら、次はBです」と業務の完結をもって区切ることや、「きれいになったら次のものを洗う」ではなく、「10回洗ったら次のものを洗う」等、客観的に作業方法を指示することで、業務指示を明確にしている。

・過集中を防ぐため、無理が少なく、具体的な内容の業務計画を作成している。

 

(採用後)出退勤時刻・休憩・休暇に関し、通院・体調に配慮すること。

・通勤中の事故や急な休暇取得時には、(略)実際に連絡する際は緊張し、ためらうことが考えられるため、誰にどのように伝えるか等、本人が対応できるように連絡先などを記入したカードを携帯してもらっている。

・本人の負担や希望を考慮し、まずは短時間勤務から始め、段階的に労働時間を延ばすこととした。

採用後の配慮事例-2
(採用後)本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

●説明をする相手の例:本人の上司、本人の配属先の社員、業務上関係する部署の社員

●説明をする内容の例:

・必要最低限の障害特性(作業の習得にはそれほど時間はかからないが、コミュニケーション能力に困難を抱えていること等)について

・本人のできることとできないことについて

・対応上の留意点(指示・注意をするときは穏やかに話すこと、一つずつ支持を出すこと等)について

 

(採用後)その他の配慮

・定期的に面談の機会を設け、本人の体調を把握している。

・本人に対し、障害特性に配慮しながらビジネスマナー等に関する研修を実施している。

・月に1度は本人と面談し、その月の振り返りと翌月の目標や課題を共有化している。また、その達成度を具体的に共有できるように、できる限り数値化している。

・ジョブコーチや支援機関の支援を活用している。

・本人の理解を得た上で、日報に本人の体調管理欄を設けてモニタリングを行い、その資料を主治医・支援機関・事業所担当者で共有している。

引用を相当長文行いましたが、言えるのは、もう、≪やさしさ≫の固まりだということですね。≪やさしさ≫しかないっていう。

(実際の『事例集』はA4用紙に全97ページで、うち11ページ発達障がいを扱っています)

この事例集を読んでいて私が感じたのが、これは仕事のユニバーサルデザイン化だ、ということです。シャンプーの横のぎざぎざ的な、目が見えなくても文字がわからなくても手触りでシャンプーかコンディショナーか区別できるという、アレです。

 

日本の会社での伝統的なキャリア教育では、「言わなくてもわかっているでしょ?」「仕事は目で見て盗むもの!」で済ませてしまう面があり、これまでは良くも悪くもその教育方針は機能してきました。

ところが今は、【同一労働同一賃金】に代表されるように、労務管理分野も欧米化の流れになっています。

ですから、以上であげた事例を「そこまでやらなくとも」と考えるのか、「このような部分から、仕事のユニバーサルデザイン化をはじめよう」と考えてもどちらでもいいのですが、これからはユニバーサルデザイン化を進めることを検討していかないと、どこで”旧態依然とした会社”(=短絡的な人はそれを”ブラック企業”といってしまいます)という評判があがるかわからない、と私は考えます。

おわりに

ほとんどの発達障がい者当事者は「生きづらさ」を抱えながら生活しています。

その「生きづらさ」が多少なりとも解消したとき、自分の居場所を見つけたと恩義を感じ、受けた恩を返そうと義理堅く尽くしてくれる可能性があります。

言葉は悪いですが「弱みにつけこむ」ことで会社は社員を守っているという強いメッセージを、発達障がい当事者のみならず全社員に対して送ることもできるのです。

障がいの有無にかかわらずそれぞれの社員の弱さを認め、強みを伸ばしていくことを雇用管理の課題にあげ取り組むことが、離職率の低下等につながり、エンゲージメントの高い職場をつくることになるのではないでしょうか。

 

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footnote/more information

厚生労働省 公正な採用選考の基本

労働契約法(第16条 )解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

LITALICO仕事ナビ「大人の発達障害のある方の特徴や原因、困りごとへの対策は?安定して社会で過ごすための方法を紹介

厚生労働省 合理的配慮指針事例集

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