【2019年4月法改正:④】勤務間インターバル設定の努力義務
はじめに
朝晩、肌寒さを感じる日が多くなりました。昨日(2019年11月8日)は立冬。日の入りがどんどんと早くなり、夜の時間帯がずいぶん長く感じられます。
仕事をしていて、夏の間と比べて終業時刻がくるのが早く感じられませんか?
夕方、暗くなると電気をつけますよね。そのとき、ふと時計を見て「もうこんな時間!」と思います。
夏は18時を過ぎても明るいですから、電気をつける時間も遅くなります。すると、夏の間は「もうこんな時間!」と思うタイミングを逃すから、なんとなく時間が経つのが遅く感じられるような気がします。私だけでしょうか?
さて、2019年4月以降に施行された『働き方改革関連法』について整理していこうというシリーズ、第4弾になりました。今回は【勤務間インターバル制度】をとりあげます。
他の働き方改革関連法にご興味があれば、お時間の許す限り、こちらの記事をお読みくださいますと幸いです。
終業時刻が「早い」と感じられるということは、その分アフターファイブの時間帯が増えるような気がする=勤務間インターバルが長くなるような気がするということですが、気のせいですね。当たり前ですが春夏秋冬、時間の長さそのものは変わりません。
参考資料はこちら。
厚労省の特設ページにバナーが落ちていましたので貼っておきます。
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勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは
「勤務間インターバル」とは、前日の勤務終業時刻~翌日の始業時刻のあいだに一定時間以上の「休息時間・インターバル」を設ける制度です。オン・オフのうち『オフ』の時間を8~12時間などと定め、社員の生活時間や睡眠時間を確保するものです。
勤務間インターバルに含まれる=出勤・退勤の移動時間、睡眠時間、家族団らん時間など。

出典:厚生労働省HP
この制度は「努力義務」です。「できる限り制度化してね」ということですので、制度がなくても何ら罰則はありません。
また、現在のところインターバルの具体的な時間数なども特に定められていません。
勤務間インターバルを何時間に設定する?
厚労省発表の『平成31年就労条件総合調査』によると、制度を導入している企業での平均は10時間57分とのことです。
- 平成31年就労条件総合調査「勤務間インターバル制度の導入状況別企業割合及び1企業平均間隔時間」
平均はあくまでも参考情報ですから、具体的に実現が可能なラインを考えてみましょう。
(例)始業9:00/終業18:00 の場合
10月31日。恒例の月末処理に加え、突発的なクレーム処理、そしてなぜこのタイミングで…のファイルサーバフリーズ。OMG!
残業申請をした予定終業時刻を超え、実際に終業したのは22時半。(HappyHalloweenのはずが~。)
- 9時間のインターバル設定⇒翌日の始業時刻までインターバルは10時間30分あるので、始業時刻をずらす必要なし。
- 10時間のインターバル設定⇒翌日の始業時刻までインターバルは10時間30分あるので、始業時刻をずらす必要なし。
- 11時間のインターバル設定⇒翌日の始業時刻までインターバルは10時間30分なので、始業時刻を30分ずらす。
ちなみにEUでは勤務間インターバルを11時間以上定めることと義務づけられているそうです。
11時間というと…出勤・退勤の移動時間(往復2時間)+健康的な睡眠時間(7時間)+そのほか生活時間(2時間)くらいで仮定すると、ぎりぎり私生活とのバランスがとれるラインと言えそうです。
始業時刻のずらし方
上記③の場合、何らかのかたちで始業時刻を30分ずらす必要が生じます。
このときには『①9:00~9:30を実際は働いていないけれど働いたとみなす』方法、『②翌日(11/1)の始業時刻を9:30にする』が考えられます。
さらに『②始業時刻を9:30にする』場合の終業時刻は、
②-1)通常通りの18:00
②-2)30分繰り下げ18:30とする の2パターンが考えられます。
ずらした部分の給与計算をどうするか
②-1の場合、翌日(11月1日)の実労働時間は30分少ないことになります。
この30分の不就労部分については賃金控除しないパターンと賃金控除するパターンが考えられますが、厚労省で紹介されている事例集のなかでは「賃金控除しない」としている会社ばかりでした。
下手に給与減額をして厄介事をつくるのは避けたい、あるいはわざわざ手間をかけるのは面倒である、という思惑が働いているのだと思います。
私見では不就労部分を減額計算したとしてもたちまち法違反となるわけではないと考えられますが、(前日には時間外手当を含め、通常計算される給与日額より多く支給しているため、総体的に考慮すれば社員への不利益が多いということにはならないでしょう)今後、制度を導入する会社が増えていくにつれ、通達などが発されるかもしれません。
制度導入の方法
適正なインターバル時間の長さは、会社それぞれ、会社の中でも部署ごとに異なってきますので、実情を考慮し必要があれば社員の意見を聞きながら導入を検討します。
オフの時間を確実にとることに反対する社員はほぼいないと思いますが、中には生活残業のためや家庭の事情で家に帰りたくないという社員がいるかもしれません。試行期間をもうけ、制度に無理がないか等問題点を洗い出し、その後本格的に制度開始というプロセスを踏むのがよいでしょう。
制度を開始するにあたっては「始業・終業の時刻」に関する部分は就業規則の絶対的必要記載事項です。就業規則に定め社員に周知します。
関連する助成金
時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)の受給要件を満たすと、助成金の対象になります。
支給対象となる取組(いずれか1つ以上を実施すること)
①労務管理担当者に対する研修
②労働者に対する研修、周知・啓発
③外部専門家によるコンサルティング
④就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤人材確保に向けた取組
⑥労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録系の導入・更新
⑦テレワーク用通信機器の導入・更新
⑧労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
この「支給対象となる取組」を行い、9時間以上のインターバル時間を新たに制度導入(制度対象者の拡大も可)することがその主な要件です。助成金支給額は、かかった経費の3/4(最大100万円)。
申請の受付締め切りは11月15日(2019年度)。もう一週間切ってる!
先日、労働局の助成金担当の方は「この助成金(勤務間インターバル導入コース)は人気が高いです」とおっしゃってました。やっぱりね。
当助成金についてはこちらの記事でも触れていますので、お時間がありましたら読んでみてください!
おわりに
これまで労働時間の管理は「オンタイム」に目が行きがちでした。オフタイムに着目することによって、逆算の発想で労働時間の削減が目指せることになります。
満足な睡眠時間がとれない日が続くと、人は壊れます。少し前には“睡眠負債”がバズワードになっていましたし、『睡眠こそ最強の解決策』と銘打つ本も上梓されています。
勤務間インターバルの導入は「社員のワークライフバランスを考えている」企業としてアピールになりますし、中小企業でも取り入れやすい制度といえるでしょう。