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大規模災害に関する労務管理

台風19号のあとで

この度の台風による被害にあわれた方に、心よりお見舞い申し上げます。

「数十年に一度の重大な災害」と称され、東海~東日本を中心に深刻な被害をもたらした2019年10月の台風19号。河川の決壊による氾濫・大雨洪水による冠水被害、土砂崩れ、秒速30mを超える強風・竜巻被害、停電・断水等インフラ被害…。そこにあった生活を一夜にして消失・破壊する自然の容赦のなさに、ただただ愕然とするばかりです。

今日は、【2019年4月改正の働き方改革関連法を整理する】シリーズを一時中断し、“大規模災害に関する労務管理”を思いつく限り記載し、整理していきたいと思います。

自然災害と労働災害

今回の台風が列島を通過したのは、たまたま土日を含む3連休中のことでした。首都圏を中心に公共交通機関が計画運休となったのも土曜日、そしてスーパーやコンビニなど流通業でも臨時休業の店舗が多数ありました。

したがって台風の日に職場で勤務にあたっていた従業者は平日よりぐっと少なく、インフラ関係など限られた業種の方のみが勤務をしていたのではないでしょうか。人命や社会を守るため、自らの危険にさらされながらも懸命に勤めを果たしてくださり、頭が下がるばかりです。

さて労働災害(労災)制度は、おもに勤務中あるいは出退勤途中の負傷について「労働者災害補償保険法」をもとに、治療費などを給付する制度です。

厚生労働省『東北地方太平洋沖地震と労災保険Q&A』には下記のとおり、自然災害時の負傷が労災認定の対象となることが明示されています。

○労災認定の考え方について
仕事中に、地震や津波により建物が倒壊したこと等、業務が原因で被災された場合は、労災補償の対象となります。通勤途上で被災された場合も、業務災害と同様に労災補償の対象となります。

一般的に労災の認定にあたっては、業務起因性・業務遂行性の2要素が問われます。自然災害の場合は、【職務により、災害が起こりそうな危険な環境下にいて業務を執り行っていた】という事実によって各要素が認められる、という考え方です。

災害時の時間外労働

労働基準法第33条では「災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合」は、労働基準監督署長に許可を受けることにより、36協定を締結・届け出することなく社員に時間外労働・休日労働をさせることができる旨が定められています。

労働基準監督署へは原則として事前に届け出、許可を受けることを要しますが、許可を受ける時間的な余裕がない場合(大概の自然災害は該当するのではないでしょうか)は事後遅滞なく届け出ることにより、この措置がとれることとなります。

「当社は、何があっても社員に残業をさせない!」という経営方針を掲げる会社でない限り、おおよその会社は36協定の届け出を済ませているものでしょう。そこで、36協定を届け出て残業は許可されているわけだから、何も災害があったからといってあらためて基準法33条の特別措置による時間外労働等の許可を受ける意味がない、と考えて手続きをしない会社もあるかもしれません。

しかし、この“非常災害時等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書”による労働時間については、時間外労働等の上限規制に係る限度時間に含めないこととなります。それは、労働時間が特別条項付き36協定による限度時間を超えても、適正な手続きを行うことにより違法状態を避けることができる、ということを意味します。

平成28年版「労働基準監督年報」によると、全国では1年間に提出された事前の許可申請(非常災害時等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書)と事後届(非常災害時等の理由による労働時間延長・休日労働届)の合計18,293件に対し、許可があったのが18,247件とのことです。

この高い許可率を鑑みるに、届け出することのハードルの高さは躊躇するほどではないのかもしれません。

労働基準監督官の心象としては、法令を遵守したうえで労働させる会社の方が、そうでない会社より圧倒的によい心象を持つのは言を俟ちません。そのような意味から、忘れないようにしたい手続きと言えます。

(以上、この項目については【ビジネスガイド2019年10月号 村木宏吉先生による「非常災害時の理由による労働時間延長等に係る許可基準の改正と実務上の留意点」】記事を一部抄出し要約しました)

休業手当

災害時に大幅に労働時間を増やさないと対応ができない業種・職種がある一方、「仕事ができない」「仕事にならない」会社も多数あります。

建屋や生産設備が故障し使用できなくなった、取引先が被災し原材料の入手見込みがたたずに生産計画できない、従業員が被災し店舗運営どころではない…etc

労働基準法第26条で定める【休業手当】は「会社の都合により社員を休ませる場合、日給の6割を支払って社員の給与保障をしなさい」という制度です。しかしこれには例外があり、天災地変等、会社の力ではどうにもならない不可抗力による休業については休業手当の支払いを要しないものとされています。

今回の台風災害を主因とする休業についても、不可抗力と認められる余地が十分にあるといえるでしょう。とはいえ、どこまでが「不可抗力によるもの」なのか判断がつきにくい場合があり、今回の台風被害に伴ういっさいの休業について、会社のいいように拡大解釈をおこない、休業手当の支払いを不要にするわけにはいかない点に注意が必要です。

たとえば、原材料の入手見込みがたたないという事例の場合。

ほかに調達先があるにも関わらず会社が経営努力をしなかった結果その調達先から仕入れができない、というパターンだと、それはむしろ「天災地変」によるものではなく「会社の責任」での休業である、と判断されます。(つまりその場合は休業手当の支払いが必要)

会社として社員が休業とならないよう、あらかじめ最大限の注意をはらっていたのに、どうしても休業させざるを得ない。休業手当の支払いが不要なのは、そんな場合です。

休業手当に関する助成金「雇用調整助成金」

社員を休業させ休業手当を支払うときに考えたいのが、労働局やハローワークに「雇用調整助成金」を申請できるかどうかです。雇用調整助成金を受給することにより、社員に支払った休業手当の一部が補填されるからです。

雇用調整助成金・制度概要パンフレット(外部リンク)

雇用調整助成金といえば、2008年リーマン・ショックの不況時に新設されて以来、一時景気が上向きになったにも関わらず細々と続いている感のある助成金です。細々と続いているとはいえ制度としてまだ存在しますので、社員の雇用を維持するためやむを得ず休業をさせる場合には、なりふり構わず活用を考えていきましょう。

申請対象となる会社は“総売上高などの経営指標が対前年比10%減以上”等という要件がありますが、東日本大震災時でもその後の激甚災害においても、被災地域については要件が緩和されるのが通例です。今回の台風災害でも要件が緩和されることが考えられます。

ボランティア休暇制度

社員の中には、自宅等は被災を免れたものの、被災した遠方の親戚や知人等の手伝いに行きたいと申し出る者がいるかもしれません。「困ったときはお互い様」「情けは人の為ならず」という心配りは、事業運営という経済活動の中でも大切にしたい気構えだと個人的には考えています。

日本の古き良き農村文化には“ゆい・もやい”の精神が根付いていました。現代においてはSNS等でつながる文化により、共感の輪は広がりやすくなっています。

会社にボランティア休暇制度があれば、社員は気兼ねなく休暇をとることができます。

ボランティア休暇含む特別休暇は法で義務付けられているものではないため、福利厚生の一環として制度を設けている会社は中小企業の中では少ないかもしれません。しかし今後、もっと明文化され推進されてもよいと思います。

ボランティア休暇に関する助成金

※2019年度の時間外労働改善助成金(職場意識改善コース)は2019年9月30日をもって受付を終了しています。したがって下記は参考情報です。
2019年4月改正の「有給休暇の付与義務」にともない改編された助成金のうち「時間外労働等改善助成金≪職場意識改善コース≫」が、特別休暇を対象とする助成金といえます。この助成金の要綱には「(1)病気休暇(2)教育訓練休暇(3)ボランティア休暇のいずれかが明文化されていない」ことが要件のひとつと記載されています。これから新しくボランティア休暇の制度を導入する場合は、当助成金の活用を考えてみても損はないでしょう。

おわりに

厚生労働省HPで今回の台風19号に関する特設サイトが開設されており、とても参考になります。

令和元年台風第19号について(厚生労働省)

サイト中の【雇用・労働】の項目にある”令和元年台風第19号による被害に伴う労働基準法・労働契約法に関するQ&A”がまとまっていますので、総務人事に関わる方は一読しておきたいですね。

 

今後、このような災害がまた発生しないとは限りません。

この機会にどのような危機も乗り越え生き残れる会社を目指し、本気でBCP(事業継続計画)策定に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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footnote/more information

参考資料:日本法令『ビジネスガイド2019年10月号「非常災害時の理由による労働時間延長等」に係る許可基準の改正と実務上の留意点』(村木宏吉)

労働基準法第26条(休業手当)使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

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