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【2019年4月法改正:②】年次有給休暇の付与義務-2

【2019年4月法改正:②】年次有給休暇の付与義務-1の続きです。

どうやって法改正に対応し管理していくか

有給休暇をめぐる諸問題

有給の管理において頭が痛くなるポイントは、多々あります。

  • 社員の自発性に任せてもなかなか有給取得が進まない
  • 中途入社社員ばかりで、基準日(有給休暇の付与日)がそれぞれ異なり管理しきれない
  • 取得せずに2年が経ち“消えていく”有給を買い取ってほしいと言われ、困ったことがある
  • 「有給残を全部つかってから退職しま~す」と社員に言われたことがあり、はなはだ困惑した経験がある
  • そもそも、人手不足なんだから、そんなに休んでくれるなと思う
  • 正直、働かないのに給料払うなんて…給料泥棒だ!という思いがぬぐい切れない
  • 「うちには有給制度はないよ」で済ませたい

どうでしょうか、下にいけばいくほどブラックが濃くなっていく感じですが 笑、多かれ少なかれ、共感することはあるのではないでしょうか?

非常に厄介なのは、社員の中でも、自らの権利意識に敏感な人とそうでない人がいて、有給の取得をめぐっては社員同士でも妬み嫉みのもとになる点です。

「権利を行使して有給をとるのであれば、その代わりに義務として仕事はしっかりと果たすべき」と考える人は、「権利は権利でしょう?有給をとることの何が悪いの?」と考える人とは決して相容れません。前者は年代が上になるほどその意識が強く、もはや職場での“暗黙の了解”と信じています。

権利は当然のものとしてあり、「義務を果たさないと得られない」のは違いますけどね。

勤勉なのは日本人の美徳ですが、仕事として成果を出すのに、滅私奉公して社畜(社畜って、あまり使いたくない言葉です)になる必要は全くないわけです。

「男性性を競う」ことが有給取得を阻みます

有給の話から少し脱線しますが、どうして現代の企業社会が機能不全を起こし閉塞感が生まれているのか、示唆に富んだ記事(少し前の記事ですが)【「男性性を競う文化」が組織に機能不全を招く】を読み、私のなかのもやもやが晴れてきました。今後の会社運営を考えるうえで、とても良い記事ですから、一読をお願いしたいところです。

今、会社が生き延びるためにすることは、働き方改革関連法の法対応もそうかもしれませんが、働いてもらう社員に対する意識改革です。ロイヤリティの向上から、エンゲージメントの向上へ。それは、これまでも識者がさんざん指摘し続けてきたことなので、私がドヤ顔で言うことではないですね。

ここで私が行いたいのは、「社労士としての私」がどのような立場で会社に労務の指導をしていくか、厄介な“有給問題”の解決策の提示を通して表明していくことです。

…話がかなり大風呂敷を拡げた感じになってしまいました。大丈夫か?汗

こんな“ミラクル対応策”はいかがでしょうか

さてお待ちかね(?)の有給をめぐる諸問題の解決策です。法改正にも対応し、職場の社員同士のやっかみ合いも対応。さらに「有給買い取って」だの「有給全部使ってから退職する」だの面倒なことを言われない、そんなミラクル対応策!

それは【給与を有給こみこみにする】そのうえで【確実に有給を取ってもらう】です

有給こみこみ給与とは?

単純な話です。社員と締結する労働契約を「年間休日数に有給休暇日数を含めた契約」にすることです。

具体的な例を挙げましょう。

年間日数 公休※1 公出※2 有給日数 実質稼働日数※3 計算上の日給※4 実質の日給※5 増加率 増加率を月収200,000円に当てはめると
365 104 261 0 261 9,195 9,195 200,000
365 104 261 5 256 9,195 9,375 1.95% 203,906
365 104 261 10 251 9,195 9,562 1.99% 207,968
365 104 261 15 246 9,195 9,756 2.03% 212,195
365 104 261 20 241 9,195 9,959 2.07% 216,598
わかりづらいですかね…?わからない場合は+ボタンを押して、解説をお読みくださいますようお願いします。
用語の解説・計算根拠は以下の通りです。
計算の過程(四捨五入等の処理)により数値が若干変わってきますことをあらかじめご了承ください。

※1)公休 わかりやすく週5日勤務(土日のみ休日)としています。1年間には52週間ありますので、52×2=104日が公休

※2)公出 =365-公休日数

※3)実質稼働日数 =365ー(公休+有給)

※4)計算上の日給

給与計算上の日給として基礎となる日給。この数字を元に欠勤控除や残業代の計算などが行われる、とお考えください。

ここでは月収200千円(=年収2,400千円)として、例えば最上段の場合は

2,400千円÷261(公出日数)≒9,195 円 と算出されます。

※5)実質の日給

※4の日給は給与計算上の日給ですが、実質的は、公休に有給が加わることにより年間稼働日数が少なくなり、その分稼働日1日当たりの単価が増えることになります。これを実質の日給と呼んでいます。

ここでは月収200千円(=年収2,400千円)として、例えば上から2段目の有給日数5の場合は

2,400千円÷256(実質稼働日数)≒9,375 円 と算出されます。

表を見てわかること:月収200千円の場合、有給休暇を年間5日増やすことは、毎月4~5千円の給与アップと同じくらいの効果がある
つまり年間5日(=1ヶ月のうち1日あるかないか)の有給を増やすことにより、実際の給与額を上げることなく、計算上とはいえ毎月の給与を上げることができることになります。
これを「机上の空論」とお感じになるかどうか。(もし採り入れることになった場合)それは大いに、社長から社員への説明内容によると思われます。

有給こみこみ給与をどのように実現するか

この「有給こみこみ給与」で契約し、定期昇給などの扱いにおいて給与は増額しない(据え置き)。その代わり、1年目は有給5日、2年目は有給6日…など、年ごとに有給日数を増やして、確実に取得する施策を打つことが要諦です。

有給は増え、確実にとれる。しかし、給与は増えずに据え置き。

本当は、給与そのものを増額させてさらに有給取得日数を増やすに越したことはありません。できれば、ね。そうは言っても「ない袖は振れぬ」のが中小企業で、そうかといって未消化の有給休暇という労働債権が増えることはリスキーです。

ですから“ミラクル対応策”とはいってもその実、“苦肉の策”です。

実現するにあたって使うのは

  1. 有給の斉一的付与、および
  2. 計画的付与 です。

(それぞれの法的要件についてはここでのテーマではないので、端折りますね)

①の有給の斉一的付与は、その方が管理しやすいからです。面倒な部分はできる限りなくさないと。

②の計画的付与に関しては、できる限り社員同士で有給取得日を融通し合えるように、グループウェアやスケジュール共有ツール(簡単なところでいけば調整さんなど)を利用するのがよいかと思います。

有給こみこみ給与にどのような効果があるか

言うは易く行うは難し、その通りです。

「給与が上がらないなんて、絶対いやだ」と反対する社員が出てくるでしょう。全社員の意識を同じ方向に向かわせるのに、想像しなかったような問題が生じてくることでしょう。問題は社内ばかりでなく、社員の休暇日数が増えたことにより取引先からのクレームが出てくることも考えられます。

しかし中には「お金より、自由に使える時間が大切」と考える人がいます。自分の権利がしっかり守られることに安心し、余裕の生まれた時間のなかで資格取得など自己投資し、身に着けた新しい能力を会社のために活かしていこう、と考える人も出てくるでしょう。

「有給こみこみ給与」取り組みにあたって、会社・社員双方に“産みの苦しみ痛み”はあります。しかし取り組みを続けることにより、雇用を守りながら社員のワークライフバランスを考える会社の姿勢や社員に対する思いが徐々に浸透し、社員からの信頼を得ることにつながるでしょう。

副次的な効果として最終的には“有給取得率100%”というパワーワードで求人が出せるようになり、恐らくその効果は絶大かと思います。「休みがとりやすく働きやすい会社に就職したい」と考える求職者は多いからです。

おわりに

法改正内容の解釈というか、有給制度そのものについて私なりの考察と提案を示しましたが、いかがでしたか?免責事項にも記載しておりますが、実際につかう場合には、労働契約法等、労働条件変更に関する知識が必要になってきますので、専門家にお尋ねくださいね。

労務管理の分野でも、発想の逆転が必要になっているとつくづく感じています。

「なんとか労働力を搾取しよう」という姿勢の会社は、市場の原理でいずれ廃れていくことでしょう。(そう信じたい)

“社員の権利”を、会社運営の阻害要因として敵視するのではなく、社員の安心感をもたらすために必要不可欠なものとして取り扱う。回り道かもしれませんが、社員の心理的な負担を下げることは、きっと生産性の向上にもつながることだと思います。

「男性性を競う文化」を緩やかにでも変えて、ひとりでも多くの人、一社でも多くの会社の疲弊感を和らげていく、そんなお手伝いができたらと願ってやみません。

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footnote/more information

厚生労働省リーフレット『年5日の年次有給休暇取得の確実な取得 わかりやすい解説』

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