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【2019年4月法改正:②】年次有給休暇の付与義務-1

はじめに(働き方改革関連法の改正内容についてざっくりおさらい)

2019年4月以降に施行された『働き方改革関連法』について、整理していこうというシリーズの第2弾。

第1弾【2019年4月法改正①】:フレックスタイム制-1

第1弾【2019年4月法改正:①】フレックスタイム制-2

…今さら?はい、今さらです。(執筆時点2019年10月)

こちらで予告していた通り、今回のテーマは「年次有給休暇の付与義務」(正確に言うのであれば「年次有給休暇の時季指定義務」)です。

まず最初に、簡単に今回の法改正全体についておさらいしてみましょう。改正されたのは労働基準法、労働安全衛生法などですが、内容面では以下の4つの柱に集約されます。

  1. 労働時間を減らす方向性のもの
  2. 柔軟な労働時間を許容する方向性のもの
  3. 正社員と非正社員の不合理な差別をやめようという方向性のもの
  4. 社員の心身の健康をより守っていこうという方向性のもの

以上の4つ。

なかでも「①労働時間を減らす方向性のもの」は、会社の労務管理へのインパクトの高さや、“この状態だと法違反”という具体的な数値があがっているため、話題になりやすいですね。

今回取り上げる年次有給休暇の付与義務も、その「労働時間を減らす方向性のもの」であり、しかも会社の規模関係なく2019年4月以降施行の一斉号令がかかっています。(ほかの改正内容は中小企業に一定の猶予期間が設けられているものもあります。)

「5日間の有給休暇付与」は、今改正において中小企業が最初に乗り越えるべき壁、と言っていいのかもしれません。

“有給消化義務”?

本筋に移る前に、どうでもよい話をします。どうでもよいけど、有給制度あるいは権利義務関係の考察の一助となる内容だと私は思っているので、とりあえず話を進めます。

これまたどうでもいいことですが、私の信条のひとつに「言葉の乱れは心の乱れ」「文字の乱れは心の乱れ」(←あ、これはドラマ“TRICK”で野際陽子さんが言ってたセリフだった)というのがあります。正しい言葉遣いをすることには、人一倍注意を払っているつもりです。

そんな私、“有給消化義務”は変な言葉だと思っています。理由は以下の通りです。

まず確認したいのは、年次有給休暇は労働基準法39条で定められた、社員のもつ“権利”だということです。

「有給を消化する(権利行使する)」、その主体は社員のはずです。通常「10月11日に有給をいただきたいのですが…」と話を切り出すのは、社員の方ですよね。本来であれば会社から「君、10月11日に有給を取りたまえ」と指示することはおかしなことです。(※原則の話をしていますので“時季変更”や“有給休暇の計画的付与”については、わきに置いてください)

ん?そうすると「有給消化義務」とは、権利を行使するのが、義務ってことですか?

これは、主語を何にするかがごちゃ混ぜになっているから起こる現象なんですね。有給を消化するのが、社員なのか、それとも会社なのか。

法で保証されている権利(本来の意味)の行使として「有給消化」と表現するのであれば、主語は「社員」です。

ところが、本来は権利を行使しその主語は社員以外ありえないはずの“年次有給休暇の取得”に、「会社の時季変更」「会社の時季指定」「計画的付与」などの実際の運用における概念が混ざってきて、有給を消化する主語が「会社」にすり替わることもあり得るようになっている。

そういう現状がうまく?「有給消化義務」という言葉に表出されているのではないでしょうか。

は~、どうでもいい話をくだくだと…ごめんなさい。(でも、言いたいから言っちゃう!)

年次有給休暇の時期指定義務とは

年次有給休暇の時季指定義務とは

では本筋に戻り、今回の法改正内容について具体的に見ていきましょう。

最近の厚労省のリーフレットは素晴らしい出来で、こういうものを作ったりしているから厚労省職員が長時間労働になるんだろうな~と思っています。そのくらい入念に作成されて、文字通り、本当にわかりやすいリーフレット『年5日の年次有給休暇取得の確実な取得 わかりやすい解説』を参考資料にするとよいでしょう。

改正内容をひとことであらわすと、次のとおりです。

2019年4月1日以降、その年の有給として10日以上与える全社員に対して、少なくとも5日間有給を使うよう、会社に義務づける

繰り返しになりますが、この改正については大企業・中小企業など企業の規模にかかわらず全企業が対象となります。

 

対象者その年の有給休暇として10日以上付与される社員

正社員に関しては雇用の初日から6か月を経過すると、10日以上の付与義務が発生します。

逆に言えば「対象とならない」のは所定労働日数が少ないパート社員の一部、欠勤などが多く出勤率が8割に満たない社員、ということになります。

会社の義務:すべての対象労働者について、有給付与日(=基準日)から1年以内に、最低5日間の有給を取得させるようにする。

つまり「時季指定義務」とは?:会社は、有給休暇を5日以上取りそうだと思われない社員について、その社員の意見を聞きながら、有給休暇の日にちを決定し、その日に取得させるようにする

言い方は悪いですが、半ば強制的に有給休暇を取得させる扱いをしなさい、ということです。

カウント対象となる有給時間単位の有給休暇を除く、有給休暇

通常の年次有給休暇、計画有給、半日単位有給、その他会社で恩恵的に制度化している特別休暇

を5日間の中に含めてよいことになります。自発的に有給取得あるいは“計画的付与”の制度により5日間の有給をすでに取得している社員は、「時季指定義務」から外れることになります。

罰則5日間の年次有給休暇を取得させなかった法違反に関しては、30万円以下の罰金刑

労働基準監督署の事業場指導監査においては、たちまち「はい違反、罰金ちょうだい!」とはならずに改善計画を提出させて指導、という流れにはなりますが、管理項目として罰則がつき強制力が高まった、といえるでしょう。

どこまで会社が責任を問われるか

さて、この罰則に関し問題となりそうな事案について、同リーフレットの中に記載されているQ&Aから以下引用します。

Q11 年次有給休暇の取得を労働者本人が希望せず、使用者が時季指定を行っても休むことを拒否した場合には、使用者側の責任はどこまで問われるのでしょうか。

A  使用者が時季指定をしたにもかかわらず、労働者がこれに従わず、自らの判断で出勤し、使用者がその労働を受領した場合には、年次有給休暇を取得したことにならないため、法違反を問われることになります。

厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』p21より

世の中には“仕事しないと死んじゃう病”の人がいて、「俺が仕事しないと、回らないからさ~」と忙しいアピールに余念がない社員は、一定数存在します。(悪意と偏見をもって言わせてもらえば、そのような人で仕事ができた例はない、と断言していいと思います。地獄のミサワか!…っていう)

ですから上記Q&Aにあがったような事例は、十分ありうる話です。

会社としては、“仕事しないと死んじゃう病”の社員に対して、どうすればよいか。見て見ぬふりをして「おう!精が出るね!」で済ませてしまっては、まずそうな雲行きです。

「労働を受領した場合には有給休暇の取得にならない」との解説文を字面通りに解釈して、社員が働いた事実があるにもかかわらず「労働を受領しない」ことにする対抗要件をどう具備するか、という方向で考えてみましょうか。例えば就業規則で、休暇時に事業場に立ち入ることを禁止してみましょうか?それとも、休暇日における労働について「私(=社員)の自由意志に基づく、自己研鑽のための行動である」とか何とかいう念書をとるようにしてみましょうか?

…そこまでやる?ですよね。論法のひとつとして“あり”かもしれませんが、それよりも何か大切なもの(=社員からの信頼)を失ってしまいそうです。

長くなりましたので、【2019年4月法改正:②】年次有給休暇の付与義務-2に続きます。

 

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footnote/more information

厚生労働省リーフレット『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』

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