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読書録『「科学的」人事の衝撃』、HRテクノロジーと社労士の関係について思うこと

読書録『「科学的」人事の衝撃』

「科学的」人事の衝撃(副題)HRテックで実現するマーケティング思考の人事戦略
三室克哉、鈴村賢治、中居隆(株式会社プラスアルファ・コンサルティング)/東洋経済新報社

なぜこの本を選んだか

キャッチーなタイトルだと思いませんか?

「科学的人事」って何よ?いったいどんな「衝撃」なのよ?…と好奇心が募ります。読書欲に燃料投下され、またAmazonでの評価も高かったので、すぐさまポチリしてしまいました。

コピーライティングのお手本にしたいくらい、私にとっては「刺さる」タイトルでした。

要旨および読後感

≪「科学的」人事とは≫
・科学的人事の対義語=属人的人事(担当者の経験、勘による人事)
・意味するところは、人事の効率化にとどまらない「データ解析、PDCAサイクルを回すことによる戦略的人事」

≪どんな衝撃か≫

 この章ではマインドやスキル、モチベーションといったエモーショナルデータの分析手法についていくつかの特徴的なものを詳しく述べていくことにしよう。これこそが、科学的人事の一番の肝であり、これまでの属人的人事ではまったく省みられなかった、もしくは一時的なデータ利用に限定されていた領域だ。エモーショナルデータを用いた深い分析こそが、科学的人事のもっとも衝撃的なポイントといってもいいだろう。

引用元:「科学的」人事の衝撃 p104

この点、もし現実的にエモーショナルデータ(従業員のマインドやモチベーションなどの動的データ)の収集および解析が進むのであれば、以前『機械脳の時代』を読んだときに感じた私の洞察(以下)は、的外れということになります。

機械脳の能力が「可視化・分類化・予測」に長けているということは、現在の技術ではまだ可視化されていない領域--例えば、その時その場の【場の空気】や【感情】を機微に捉えていくことが、社会保険労務士としての仕事の付加価値になるのでしょう。

参考記事:読書録『機械脳の時代』

ためになった点(忘備録)

◎テキストマイニングの手法により、非構造データ(文書、メール、社員アンケートの自由記述欄など)が定性情報として分析可能なデータになるということ。

●テキストマイニングに用いられる技術⇒自然言語処理、データマイニング
1)形態素解析
2)構文解析
3)辞書

●定性情報の分析結果例=離職ワードランキング(=この言葉が日報などにあがると要注意)

1.業務量/2.終える(否定)/3.難しい/4.上司/5.異動

引用元:「科学的」人事の衝撃 p131


本書がプラスアルファ・コンサルティング社『タレントパレット』の販促のためにあるという位置づけには気をつけないといけませんが、今後のHRテクノロジーで目指されるところが十分に理解できました。

読後感については、以前から考えている「HRテクノロジーと社労士の関係」と被るところがあるので、以下のセクションで書いていきます。以下の思いが強くなった、かな。

HRテクノロジーと社労士の関係について思うこと

情報収集をかねて社労士向けの“HRテクノロジー活用セミナー”に行ったことがあります。が、高い受講料を払ったわりに、正直がっかりした経験でした。

そのセミナーでは、給与計算や勤怠管理、それから『タレントパレット』のようなタレントマネジメントなど各種のSaaS人事関連ソフトの機能紹介がありました。まぁ、それはそれで、よかったです。色々な方面で開発が進んでいることが確認できましたから。

しかし、言い方は辛らつですが「それだけ」。ソフトの機能紹介にとどまっていたのががっかりポイントでした。

「こんなことができます、あんなこともできちゃいます、顧問先にもおすすめです!」

…で?

私が知りたかったのは、その先の話、ソフトを使った人事コンサルティングの手法です。ソフトの機能紹介だけならば、各社HPやホワイトペーパーなどをダウンロードして読めば、わかります。

…で?社労士としてそういったソフトを使うメリットは?顧問先への新しい提案事項は?ソフトの紹介だけ?何を付加価値にするの?顧問先に新しい技術を提案するときの注意点は?

少なくとも私は、誰かに何かをすすめる場合にはメリットばかりではなく、もしデメリットを感じたのであれば、そのデメリットも隠さず伝えたいです。そうでないと、ただの伝書鳩になってしまう。機能紹介だけだったら、深夜番組でやっているようなテレフォンショッピングのアシスタントに過ぎなくなってしまう。「え~、驚きですねー!」と賑やかしをするだけの。そういうのは、私はプロフェッショナル(士業)としてのプライドが許しません。

せめて何か爪痕を残したい!と思ってます。
将来、社労士業務はそのようなテクノロジーに置き換わる可能性が十分にあって、もしかするとある部分、もうソフトに負けているのかもしれない。だけど、ただソフトに使われるのではなく、いいようにツールとして利用し、もっと創造的なことをしてみたい。あるいは法律をほんの少しかじっている者として、法的観点からテクノロジーを使うときのリスクについて顧問先に話したうえで、顧問先での安全な利用に資したい。

そうしないと、知らず知らずのうちに顧問先が訴訟リスクに巻き込まれる可能性が出てしまいます。『リクナビ内定辞退者予測サービス』問題では、サービス提供者であるリクルートキャリアが個人情報保護委員会や厚労省から行政指導を受け、サービス利用者の会社についても問題となりませんでした※なりましたが、適切に情報やテクノロジーを利用しないと、いつ何時事件事故にあうか分からないわけです。

(※2019.12.11追記:サービス利用会社も個人情報保護委員会から行政指導がありました。)

「先生が紹介してくれたソフトを利用していたら、とんでもないことになっちゃったよ!」…な~んて顧問先から言われるのは、絶対いやです。
「いえ、そんなことを私に言われても困ります。ソフト会社のミスです。ソフトを選定したのも、御社です」と責任転嫁できなくもないですが、どのようなリスクがあるかは前もって知っておき、そのうえで事件事故にあったら「やっぱりね、私のいった通りでしょう」という反応を示せるようになっていたい。

そのスタンスを崩さずにテクノロジーと対峙していたいです。

おわりに

きっと、考えすぎな部分があると思います。もう少し楽に考えてみたら?と自分でも思います。でも、そういう性格なので…。

従業員対象にマーケティング思考を取り入れるというのが肝なのですが、実際のところ、普通の意味のマーケティング(顧客を対象とする)も、ここまでデータドリブンでおこなっている会社はまず中小企業にはないと思います。IT化の優先順としては、まず顧客を対象とするCRMから徐々に裾野を拡げて、と展開されるでしょうから、中小企業にタレントマネジメントが本格的に導入され一般的になるまではしばらく時間がかかるでしょう。

しかし現に技術は出来上がっているのだから、いずれコモディティ化されます。それまでには、より付加価値を提供できるよう、身の振り方を考えないとならないなぁ。

テキストマイニング技術の概念がわかりやすく書いてあり、そこが大変興味深かったです。某セミナーを受けるよりは、本書の方がためになりました。(値段も10分の1以下だし!)


footnote

2019.12.11追記
「リクナビ内定辞退者予測サービス問題」における行政指導(令和元年12月4日、個人情報保護委員会)

株式会社リクルートキャリアに対する勧告等について (PDF : 190KB)

つまり、サービス利用会社においても「リクルートキャリア社を委託先とし個人情報を取得し、入社選考および【内定辞退率の予測】に用います」等と取得目的を明らかにする必要などがあったということですね。

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