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ワーキングアグリーメントと就業規則

はじめに

私も最近知ったのですが「ワーキングアグリーメントworking-agreement」という概念がIT業界、主にソフトウェア開発に携わるIT系会社にあるようです。ワーキングアグリーメント、直訳すると「働く上での同意・合意事項」といったところでしょうか。

今日はこの「ワーキングアグリーメント」について、それから「就業規則」に触れないわけにはいかないので、両者の違いなどについてまとめてみたいと思います。

ワーキングアグリーメントとは

ワーキングアグリーメントの例

ワーキングアグリーメントとはどのようなものかは例を見た方が早いと思いますので、一例を挙げます。

≪例≫
・デイリースクラムは10時にチームボードの前で
・朝会では助けが必要なときはっきりと伝える
・わからないときは「わからない」と言う
・残業は1人でしない。チーム全員で判断する
・slackでメンションがついている場合はアクションを返す
・スクラムイベント以外の会議は30分以内で!
・金曜日の4時以降は新たなタスクを取らない
  etc
  ・
  ・

「働く上での詳細ルール」のようなものですが、ワーキングアグリーメントで大切なことは、チームの価値観の共有や社内文化をつくる目的で作成されるものだということです。

そのような意味では「コミュニケーション上の基本ルール」といったほうが適切なのかもしれません。

ワーキングアグリーメントのメリット

ルールというと、守らなければならないもの、行動を縛ってくるものというイメージがありますが、実はこのようなルールが決まっていると他の人に働きかけやすくなり、結果、働き手の自律性を高めることにつながってきます。

一例で挙げた、「わからないときは『わからない』と言う」、このようなことが公になっていると、心理的安全性にもつながり、質問しやすい雰囲気が生まれますよね。質問しやすくなれば、仕事も成果があがります。
わからないことをわからないと言うのは当たり前のことかもしれませんが、中には「知らないことは恥である」と感じる人もいます。「こんなこと聞いたら笑われてしまうかも」と不安に思う人もいます。
そんなシャイな日本人向けの、とても良いワーキングアグリーメントだと思います。

心理的安全性を高めるほか、メリットは多々あります。

・メンバー同士の働き方の考え方の「ずれ」をなくす
・コミュニケーション不全によるトラブル発生を防ぐ
・採用時や新しいメンバーに、チームの行動規範や価値観を伝えやすくなる

など。
『社是』『社訓』といった規律で社風や価値観を共有する会社もあるでしょうが、ワーキングアグリーメントはもっと社員の日常に添った価値観の伝え方であり、浸透のしやすさでは後者に軍配が上がるでしょう。

ワーキングアグリーメントを作成するには

作成には「作成のためのルール」があります。

①チームメンバー全員がコミットして決める

メンバー全員が議論し、納得したものを決めるということです。会社や上司が一方的に決めるのはNG。

②明文化する、具体的に決める

きっちり言語化する、ということです。また、「整理整頓を心がける」などふわっとしたものではなく「帰宅時にデスク上に何も置かない」というように、メンバーの誰もがOKとNGの判断ができるような具体性を持たせて決める、ということです。
一つ一つのアグリーメントを付箋に書き、ホワイトボードなどに貼りだして運用しているところもあるようです。

③定期的に見直し、アップデートする。

一度決めたらおしまいではなく、適時適正なアグリーメントとなるようにする、ということです。メンバーみんなが当たり前にできるようになったことを削除したり、随時新たなルールを加えられるようにメンバーでの議論の場を設けたりします。(ワーキングアグリーメントを見直す時期についてをワーキングアグリーメントに挙げて運用しているところもあるようです。)

④(番外編)軽い懲罰的なものも、あり

メンバー総意のアグリーメントに対し、じゃあそれを破ったらどうするの?という問題も生じます。通常は口頭注意で間に合うかと思いますが、一種の“罰ゲーム”的なものを取り決めて運用しているところもあるようです。
私が面白いな、と思ったのは「遅刻したら罰金9円 (ただしお釣りなしで自分で手配する)」というもの。地味~に、きっついですよね 笑。

就業規則とワーキングアグリーメント、何が違う?

「働く上でのルール」と言えば【就業規則】ですが、では就業規則とワーキングアグリーメント、何が違うでしょう?

作成方法と目的
就業規則は労働契約の一種といえます。労働契約とはざっくり言ってしまえば「社員が労働を提供する代わりに報酬を得る」という契約で、労働を提供する際に付随して守ることを要請されるのが就業規則です。一般的に就業規則は会社が専行して決めるものです。(労働者の意見を聴取するのは手続き上の決まり事です)
対して、ワーキングアグリーメントは社員同士が「自分たちが働きやすいように」社員間の議論を経て決まるものです。

法的拘束力
法的拘束力(したがう義務があるかないか)の面からは、就業規則は労働契約の一種であり、正式な手続きを踏み内容も合理的であると評価された就業規則であれば、ワーキングアグリーメントより法的拘束力は高いといえるでしょう。

適用範囲
一般的に就業規則は会社単位(正確に言えば事業場単位)で適用されます。A社の就業規則がB社の社員に適用されることは労働者派遣契約などの例外を除き、一般的にはありません。
対してワーキングアグリーメントは“チーム”や”プロジェクト”単位で作成されることが多く、一つのワーキングアグリーメントがA社社員にもB社社員にも適用されるということはあり得る話でしょう。(IT業では業務請負など多重的な契約関係の中で働く社員が多いため)

「就業規則」「ワーキングアグリーメント」で定めることはどこで切り分ける?

就業規則には規定および記載しなければいけないこと、制度があれば記載しなければならないことがあります。(労働基準法第89条)。前者を就業規則の「絶対的必要記載事項」、後者を「相対的必要記載事項」と呼んでいます。
厚生労働省リーフレット「就業規則を作成しましょう」

規定・記載しなければいけないこと
 ① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
 ② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
 ③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

制度があれば記載しなければならないこと
 ① 退職手当に関する事項
 ② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
 ③ 食費、作業用品などの負担に関する事項
 ④ 安全衛生に関する事項
 ⑤ 職業訓練に関する事項
 ⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
 ⑦ 表彰、制裁に関する事項
 ⑧ その他全労働者に適用される事項

ワーキングアグリーメントで定めるのは「朝礼を9時に始めます」や「会議を30分以内に終わらせます」といった、些末ともいえる決まり事です。それらは上記のいずれかに該当することは、ほとんど考えられないと思われます。

しかし、些末とは言っても、例えば「遅刻したら罰金9円」は、厳密には上記「制度があれば記載しなければならないこと⑦」の制裁に関する事項に該当します。これはどう考えたらよいでしょう?

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単純に、

就業規則はいわば公式ルールで、違反すると「やっちまった感」。処罰されるし、許してもらえないかも?!

対するワーキングアグリーメントは非公式ルール、違反すると「やっちゃった感」は残る。罰ゲームやらないと(てへ♡)。でも許してね!

…という感覚の違いだろうと考えます。

就業規則の目的のひとつには、「決まり事を作り、決まり事を守らないものに罰を与える」といったことがあるかと思います。一般的にはその決まり事を就業規則の中では“服務規律”などで定め、別の規定項目”懲戒”や”制裁”で、服務規律を守らないと懲戒処分に処す、という形で運用されているでしょう。

「遅刻する」という規律違反が会社の業務にとってどれほど重大な違反なのかは、会社によって判断が分かれます。日本のビジネスでは時間を守ることは「常識」と考えられているので、遅刻の場合は給料を減額する、遅刻を〇回した場合にはけん責処分、など何らかの規定で違反の重みづけをしている会社が大半とは思います。

給料減額にしろ、けん責処分にしろ…重いですよね。
「罰金9円」、可愛げがありますよね 笑?

端的にいえば、懲戒処分か罰ゲームか、その感覚の違いです。
ただ、いくら遅刻するたびに毎回9円の罰金を払うにしても、それが毎日のように続くと…罰ゲームで済ませるわけにいかないですよね。

会社として公式に処分を下すか、仲間内の罰ゲームで済ませるか。そのような感覚の違いで使い分けるのがいいのではないでしょうか。

おわりに

今後、社員が自発的につくっていくルールである「ワーキングアグリーメント」が、IT業に限らず増えていくと思います。コロナ禍を経て、組織マネジメントもトップダウン方式ではなく、いわゆるティール組織のような能動的・自律的な働き方が重要視されるマネジメントの在り方が注目されているからです。

古来から日本は「和」を大切にしてきた風土があります。チームの和に貢献するワーキングアグリーメントは、日本人にも親和性が高いと私は考えます。

当たり前のことを文章にして守らせることに抵抗がある人も中にはいるかもしれません。仕事は目で盗むもの、とか俺の背中を見て覚えろ!など昔気質の方にしてみたら、『わからないときは「わからない」という』なんて、当たり前すぎて馬鹿馬鹿しく思われるかもしれません。
しかし、ビジネスでは以前よりずっとスピードが求められるようになっていて、社員の即戦力化ができるかどうかが業績アップのカギともなっています。明確になったルールを示すことで、コミュニケーションの食い違いを是正したり価値観を共有したりすることができ、教育の手間が省けます。

働き方そのものも変化していき、会社という枠組みを超えて働く人も増えていくと予測されます。越境するチームをまとめあげるには、やはりすべてのメンバーが気持ちよく働ける決まり事が必要です。

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「今一つ、社員のやる気が見られないんだよね…」とお困りの社長さん、ここは社員同士での議論の場をつくり、ワーキングアグリーメントを作成してみませんか?社員全員を集めると収集がつかないということであれば、部署や課単位など、やり方はあると思いますよ。

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